背景

ミルウォーキーのダウンタウンに位置するウィスコンシンセンターは、190,000平方フィートの展示場と37,500平方フィートのパーティーホールを擁する一大コンベンションセンターです。ここでは、有名企業が出展するモーターショーや見本市から、企業の会議や結婚式にいたるまで、様々なイベントが開催されています。1998年に設立されて以来、ウィスコンシンセンターは常に最新技術による電話会議、デジタルサイネージ、データ伝送、そしてオーディオ/ビデオテクノロジーを来場者に提供してきました。

ウィスコンシンセンターはスカイウォークを通じてヒルトンホテルやハイアットホテルとつながっています。また、道路を挟んだ向かい側にはミルウォーキー・シアターがあります。センターを管理しているWisconsin Center District (WCD) は、常に最高水準のコンベンション・展示会を提供できるよう、日々努力しています。

2014年、WCDはセンターのオープン以来ずっと使い続けてきたオーディオシステムのアップグレードを決定しました。 「音声による会議やネットワークはここ数年大きく進化しています。WCDは、従来のオーディオネットワーク環境をアップグレードして21世紀にふさわしい環境を実現するよう、我々に依頼しました」と、システム施工会社であるMetro Sound & VideoのオペレーションディレクターKeith Anderson氏は述べています。

課題

大きな課題は時間でした。ウィスコンシンセンターでは、企業イベント、見本市、会議、式典などが常に開催されています。短期間でも閉館すればセンターの収益に大きく影響します。

しかしこのオーディオアップグレードは現在、そして将来の経営に不可欠なものと位置付けられ、センターは1か月間閉館し、Metro Sound & Videoチームはその短い1か月の中で新しいデジタルオーディオシステムの設計、設置、テストを行いました。

メインのエキスポホールは巨大なコンクリートフロアの4つの部屋があり、フォーマルなイベント向けの3つのスペースから成るパーティーホール、必要に応じてつなげることも可能な小型ミーティングルームがあります。

「大きな再構成を必要とすることなく、お互いの部屋と連携させたり連携を解除したりする設定を容易に選択できるような、共通化したシステムを構築する必要性に迫られていました」と、Anderson氏は述べています。「既存のオーディオインフラストラクチャを一部活用しつつも、多くの部分においては1か月で大規模な構築プロジェクトを行わなければなりませんでした」

ソリューション

音声によるプレゼンテーション、ゾーン内でのコミュニケーションや通知が可能なマルチチャンネルの伝送システム構築のために、Metro Sound & VideoはAudinateによるDanteデジタルオーディオ・ネットワークソリューションの導入を選択しました。Danteは、標準的なIT LANネットワーク環境を活用することで、コストパフォーマンスの高い施工を実現し、またDanteはこの課題への挑戦の中で、多様なオーディオ・アプリケーションのサポート、また迅速な施工と、将来の拡張に備えた枠組みを提供しました。

今回のケースでは、オーディオルーティングおよびスムーズなコントロール・ページングを可能にするため、Dante対応のSymetrix SymNet Radiusマルチルームデジタルプロセッサーが追加されました。この集中管理型のプロセッシングチェーンは施設のあらゆる場所のオーディオニーズにも対応し、各部屋のローカルのマイクロフォンジャックを備えたオートミキサーより、ユーザーは専用のプリセットを呼び出すことができます。これはオートサロンで特に重宝される機能で、ユーザーがボタンを押すだけで、1つのマイクから、搬入口を含む施設のあらゆる場所へ音声を届けることができます。

Symetrixアーキテクチャーには、音量調節やプリセットを搭載したSymetrix ARC-2eウォールパネルが組み込まれています。これらの設定はスマートフォン、タブレットまたはノートパソコンから調節できるため、マイクの音量を上げる、またはプレゼンテーションの音量を調節するなどといった調節が離れた場所からでも可能となります。

「Danteオーディオフローを標準的なネットワークスイッチに接続し、SymNetソフトウェアでダウンロードボタンを押すだけで開始できました」と、Anderson氏は述べています。「音声の途切れやノイズはありませんでした。1つのコンピュータ画面上で簡単に操作できるため、オーディオルーティングのためにパッチパネルを再構築したり、調整のために建物内を駆けまわるような必要はなくなったのです」

新たなDanteオーディオネットワークにより、オーディオワークフロー全体が合理化されました。そして、「Danteはプロジェクトにおいて400時間以上の節約になったのです」と、Anderson氏は述べています。「CobraNetのような競合技術と比較して、Danteのように高度なデジタルオーディオルーティング、また柔軟なネットワークを実現するものはありませんでした。Danteはあらゆる方法でオーディオを活用でき、求めていた環境を唯一かなえてくれるものでした」

この先5年の間に、ウィスコンシンセンターの近くに新しいアリーナの建設が予定されており、ウィスコンシンセンターの展示・コンベンションスペースは2倍になります。「この時にも、デジタルオーディオネットワークをアップグレードする必要があるでしょう」と、Anderson氏は述べています。

「作業を完了するときはいつでも」、同氏は続けます。「完全に機能し、信頼性の高いオーディオシステムを完成させてから終了することが目標です。もしまたここに戻ってくるとしたら、それはあくまで拡張するための目的でしょう。堅牢で柔軟なDanteはこの目標をかなえてくれるものです」

特長

  • ウィスコンシンセンター全体でデジタルオーディオ信号の伝送を効率的に実現するマルチチャンネルシステムの実装
  • 施設全体における音声によるプレゼンテーション、ゾーン内でのコミュニケーション、ページング、アナウンスのサポート
  • 迅速な施工により作業コストを削減、施設の閉館時間の最小化
  • iPadやその他のポータブルデバイスを使用しての、集中管理型のシグナルルーティングおよびネットワーク接続された機器の調節
  • 標準的なITネットワークスイッチの使用可能
  • 導入初日よりトラブルのない、円滑で信頼性の高いオペレーション